禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

東京都包括受動喫煙防止法案の制定を速やかに実現すること(その21)(最終章3)

広島市立安佐市民病院
名誉院長 岩森 茂

 FCTC(Framework Convention on Tobacco Control)と受動喫煙防止法について...
 私の前文の折々に引用しているFCTCであるが、その底流にあるものはWHOが立案し、それを最も強く願い続けてきているPS防止法に他ならない。実に丁寧に詳述されているので、この条例については本文でどうしても紹介しておきたいのである。受動喫煙防止のガイドラインは、2008年6月~7月にタイ国バンコクでCOP2(第2回締約国会議)第8条で採択されたものであり、日本政府もこの会議に出席して条約を批准すると直ちに誠実に実行すべきであったのに、その約束を反故にしたまま10年に垂々とする月日が経っている。日本政府(厚生労働省、財務省の担当責任者)の無責任さにはあきれてしまうが、ともあれ、ここで第8条の大略をまとめて紹介してみる。その要約は、まず職場、公共交通、公共の場所などで人々をたばこの煙から保護する全般的な義務を謳っている。すなわち、締約国はたばこ煙にさらされることが死亡、疾病および障害を惹き起こすことが科学的に立証されていることを認識し、そして屋内職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所におけるたばこ煙にさらされることから保護する効果的な措置を講ずるとして、個人を受動喫煙から守る義務は、政府として個人の基本的人権を自由の脅威から守る法律を執行する責任があることを意味する。また、権威ある科学的機関はPSががんを起こすと認定しており、締約国には発がん物質を含む有害物質からの曝露を規制する義務があるとして、これに説明文がついているが、

① 受動喫煙の毒性には安全なレベルはない。これは科学的証拠により否定されている。換気、空気清浄機、喫煙区域の指定、換気系の分離に関係なく、解決策が無効であることは明らかに証明されてきている。そして、工学的解決策は無効であるとの科学的証拠は存在する。

② すべての屋内の職場と公衆の集まる場所は禁煙でなければならない。

③ 人々をPSから守るには法律が必要である。自主規制による喫煙対策は効果がないことは繰り返し示されており、従って法律は単純、明確な必要がある。

④ 屋内完全禁煙法を成功裏に施行するには、しっかりした計画と十分な財源が不可欠である。

⑤ 屋内完全禁煙対策を指示し遵守させる上で、市民社会の役割は重い。そしてこの法律を策定し、履行し、遵守させるプロセスにおいては、積極的なパートナーの一翼になってもらう必要がある。

⑥ 屋内禁煙法制の履行、執行およびその効果をすべて観察し評価する必要がある。これにはこの法制の履行と執行を弱めようとするたばこ産業の活動を監視し対応を行うことも含まれる。

⑦ PSから人々を保護する対策が必要な場合、強化され、拡大されなければならない。そのためには新たな科学的証拠と事例研究の経験に基づいた新規立法、既存法の修正、執行状況の改善などである。

 実効ある立法措置の範囲についても述べているが、この点も5項目が追加されている。

① 屋内職場、屋内の公衆の集まる場所、公衆のための交通機関など人々をPSから保護するための実効のある対策の実施の要望。

② すべての締約国はその国におけるFCTC発効後5年以内(日本は2010年2月27日)に例外なき保護を実現するような努力しなければならない。

③ PSに安全レベルはない。また、いわゆる分煙などの工学的対策はPS防止にはならない。

④ PSからの保護は職場として使用する自動車(タクシー、輸送車、救急車など)を含むすべての室内あるいは囲まれた職場においても実施されなければならない。

⑤ 本協定の条文は、すべての屋内のみならず、他の屋外の公衆の集まる施設も完全禁煙とするように求めている。

 さらに罰則についても、違反に対して罰金などの金銭的罰則を取ると明記すべきであるとし、営業免許の取り下げといった行政的制裁も法律に盛り込む必要があるとしている。
 日本においても受動喫煙防止について健康増進法の中で述べられているものの、惜しむらくは遵守義務に終わった点であり、その後の進展は厚生労働省のいかなる法律も認められず、かえって看過されてしまっているのが現状である。
 次に第9条、第10条と続き、全般的な義務としてたばこ成分の規制および情報関係などのたばこ会社への要求がなされているが、この中にはたばこ製品の魅惑性、嗜癖性、依存形成作用、全般的毒性を弱めることによって、たばこ関連疾患による障害と死亡を減らすことに寄与するというような工作(健康への悪影響、食欲を減退させる科学的物質を意図的に混入するなど)も行われていることが分かっているが、この点についての紹介は省略する。
 この訳文は日本禁煙学会(作田学理事長)が2011年に有料発刊されたものを引用させていただいたが、このFCTCポケットブックは禁煙運動に携わる者にとっては大いに参考となるものであり、ここに記して感謝の意を捧げるものである。いずれにしろ本ガイドラインをこの項で紹介したことをもって、私の本来の目的である最終章、結論へとつなぎたい。

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