禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

美人女優がタバコを止めるとき

三原赤十字病院
院長 渡邉 誠

 平成23年の厚生労働省による国民健康・栄養調査では、習慣的に喫煙している人は男性32.4%、女性9.7%と、男女とも前年よりも増加し、下げ止まりの兆しがある。また、女性喫煙者には男性と異なる喫煙の影響が考えられる。

 M.Tはこの国で著明な女優である。彼女は1日に40本のタバコを吸うヘビースモーカーであった。彼女が喫煙者であることを世間に知らしめたのは、有名なニュースキャスターのK.Hである。"あなたにタバコは似合わない"とテレビ番組の本番で話したとのことである。また、これも有名なニュースキャスターであるF.Iもニュース番組でゲストとして出演したM.Tに"まだタバコ吸ってます?"と尋ね、M.Tは"ええ、たまに"とぼそっと答えたとのことである。確かにM.Tはヘビースモーカーで、過去に何度も禁煙に挑戦したがすべて失敗に終わっているとのことであった。
 彼女は2007年に結婚し、2014年に大ヒットしたアナと雪の女王で主人公エルサの声優を務め、主題歌である Let it go を上手に歌唱している。この年、結婚8年目に妊活のために禁酒とともに禁煙し、国民的大人気ドラマ HERO の出演も辞退したとのことである。その結果、めでたくその年の秋に妊娠し、翌年春に女児を出産した。出産後は子育て中であり、その後も禁煙は続いているようである。

 近年、若い女性の喫煙率は確実に上昇しているようである。その理由として、女性の社会進出に伴うストレス、男女平等時代における喫煙に対する意識の変化、食欲を抑えるダイエット効果、またテレビや映画に出てくるスターがかっこいいからといったことなどが考えられる。
 女性に対する健康の影響については、女性が喫煙すると男性に比べて呼吸器系の疾患、特に肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)になりやすく、循環器系では脳卒中、心筋梗塞になりやすいと言われている。喫煙は女性の性機能にも影響することが知られている。すなわち、卵巣機能不全から卵子の質が低下し、受精率の低下すなわち不妊になりやすい、閉経が早い、更年期障害が早く訪れる、骨粗しょう症になりやすい、などである。さらに、卵巣がん、子宮頸がん、乳がんの罹患率が高いとされている。喫煙女性が妊娠した場合には、胎児発育不全や流産、早産、死産、子宮外妊娠、早期破水、前置胎盤を起こしやすいとされている。
 妊娠中の胎児に及ぼす喫煙の影響としては、出産後の子どもの注意欠陥多動性障害(ADHD)や乳幼児突然死症候群(SIDS)との関連が言われている。授乳中の喫煙では、ニコチンが母乳に移行しやすくまた母乳中で濃縮されることから、授乳をうけた子どもは不眠、嘔吐、下痢、いらいら、落ち着かない、頻脈などを起こしやすくなる。また出産後、子どもの周囲でタバコを吸うと、子どもが呼吸器障害や肺機能低下を起こすことや、気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症や中耳炎のリスクを上昇させることが知られている。

 禁煙を成功させるには、禁煙したい理由を明確にすることが大切である。シワシワパサパサのタバコ顔にはなりたくない、そろそろ子どもが欲しい、息切れしないで走りたい、など具体的な目標を設定することが、禁煙成功の第一段階である。5月31日は世界禁煙デーです。女性喫煙者のみなさん、これをきっかけに禁煙しませんか?

 前述のごとく、美人女優M.Tが妊活、子育てのために禁煙したことは非常に賢明な行動であったといえる。できればこの先も禁煙のまま、女優活動を長く続けていただき、あのすばらしい演技と歌唱をわれわれに届けて欲しいものである。彼女の一ファンとして心からそう願っている。

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