禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

禁煙治療雑感

医療法人順典会 手島医院
理事長 南 順一

6年半前に当院に禁煙外来を設けて以来、これまで約700例の患者に対する禁煙治療を行ってきた。開設当初に比べ近隣の医療機関で禁煙治療を行うところが増えてきたこともあり、最近では当院の禁煙外来を受診される患者の数は減っているようである。最近、禁煙に対する啓発キャンペーンが種々の形で行われるようになっており、これらが功を奏して禁煙外来の受診者が減少しているのであれば喜ばしいことである。全ての医療機関から禁煙外来が完全になくなることがわれわれにとってのゴールなのかもしれない。

さて、禁煙外来を受診したニコチン依存症の患者で禁煙が達成できないのには2つのパターンがあるように思う。1つは行動療法に加え禁煙補助薬による積極的な治療介入を行ったにも関わらず、定められた保険診療の期間内にニコチンの誘惑に打ち勝つことができずに喫煙を続けてしまうパターン。2つは期間内に禁煙は達成できたが、その後しばらくして喫煙を再開してしまうパターン。後者についてはその後の再チャレンジで禁煙を達成できることが多いが、リピーターとなって禁煙外来をたびたび受診することもある。

前者の治療抵抗性のパターンの一部については、状況によっては節煙を仮の目標として次のステップにつなげることは許容されないのであろうか。禁煙治療においては、節煙をゴールとしてはいけないとされている。これは、喫煙が体に及ぼす悪影響はタバコのニコチン含有量や本数にはほとんど依存せずに深刻なものであるというデータが示されている1)からだと思う。

しかしながら、最近 New England Journal of Medicine 誌に掲載された840例の習慣的喫煙者を対象とした無作為化比較試験の成績によると、従来通りの喫煙を継続するように割り付けられたグループに比べ低ニコチンのタバコを喫煙するように割り付けられたグループでは、6週間の時点においてニコチン曝露量、ニコチン依存度、喫煙本数のいずれも有意に低値であった2)。この成績からは、治療抵抗性の一部のニコチン依存症の患者に対して、まずは低ニコチンのタバコに切り替えることによってニコチン依存度を低下させ次のステップにつなげることができる可能性が示唆される。しかしながら、実際の有効性についてはさらなる検討が必要であろう。

1) Benowitz NL, Kuyt F, Jacob P 3rd. Circadian blood nicotine concentrations during cigarette smoking. Clin Pharmacol Ther. 1982; 32 : 758-764.

2) Donny EC, Denlinger RL, Tidey JW, et al. Randomized Trial of Reduced-Nicotine Standards for Cigarettes. N Engl J Med. 2015; 373 :1340-1349.

戻る