禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

東京都包括受動喫煙防止法案の制定を速やかに実現すること(その15)(総括編5)

広島市立安佐市民病院
名誉院長 岩森 茂

第3次喫煙害(third hand smoking)

私はすでにキャンペン464号(平成21年10月)に「サードハンドスモークを知っていますか?」と題し一文を草している。その語源は平成21年1月アメリカの小児科医のグループが喫煙害を警告するために新しい言葉として発表し、たちまち世界中で有名となった。当時は受動喫煙のことをセカンドハンドスモークといい、くゆらされた煙を環境たばこ煙といい、本人が吸う煙よりも毒性が強いことから、喫煙規制の大きな原因となっていた。ところが、この考えは生ぬるく、遮断された室内で喫煙した後の喫煙者の頭髪や衣類、皮膚、部屋のしみやほこりなどに煙残留物が付着することが分かってきて、「はいはい」するような幼児が触れたり、吸い込むことにより起こる煙害の危険性が強く警告されるようになり、これがthird hand smoke(smoking)であり、日本語でこの第3次喫煙害を残留受動喫煙、強制吸煙、喫煙者媒介喫煙など表現されたが、結局、サードハンドスモークが無難ということになった。ところが、平成22年厚生労働省はこれを健康局長通知の中で「残留タバコ成分」と定義している。要はたばこから発生した粒子のミストが喫煙のロ腔、気管支粘膜、髪や衣類、カーテンやソファーなドに付着し、それから発生するガス状成分(たばこ臭)を第三者が吸引してしまうことで、赤ちゃんやペットなど顔と床やソファーとの距離が近いため、この害を受けやすいことは当然である。大和浩教授らは喫煙者で混み合う東京駅地下、動輸の広場の喫煙室に静置したタオルから発生する総揮発性有機化合物(Total Volatile Organlc Compounds:TVOC)を測定することで、喫煙室の衣服から発生する残留たばこ成分(サードハンドスモークたばこ臭)の評価をしている(国がTVOCはシックハウス症候群の指標として測定している)。

その結果は15分静置で早くも高いTVOC値となり、たばこ臭が付着し、時間の経過と共に増量することが判った。即ちこれが残留たばこ煙害の実証であるが、ここに付着した粒子はPM2.5、さらにはより細かいたばこ煙内に含まれる細粒子ということになる。

PM2.5は中国北京の大気汚染で有名になり、しばしばマスメディアに登場している言葉で、もっと詳しく述べるとPM2.5は微小粒子状物質で直径2.5マイクロメートル(100万分の1)以下の微粒子で化石燃料(石油、石炭)、草木が燃える時に発生するもの、たばこ煙もその1つでフィルターも素通りで、肺の奥まで侵入していく。たばこ煙内の粒子はさらに小さく、1μm以下であることが分っている。これらが当然のことながら、呼吸器疾患、循環器系への悪患影響を及ぼし、その死亡率を高めていることも判っている。中国の北京市の空気はPM2.5の濃度も大体330μmであるが、日本の喫煙自由の居酒屋では空気1m2あたりで568μm程度、これは中国より越境飛来するPM2.5の量よりは大きいことになる。

個人用粉じん曝露モニタSIDEPAK Model AM510(輸入品)でPM2.5などは測定可能であり、禁煙運動家の方々は容易にPM2.5の濃度を測って報告されている。測定により喫煙汚染度とPM2.5の濃度の相関性が鋭敏なことが証明されている。国の環境基準値は1日平均30μmg、環境省の検討会がまとめた外出自粛などを呼びかける暫定指針は70μmgとされる。喫茶店での調査でも壁と自動ドアで分煙した場合、煙のこもる喫煙席のPM2.5は平均441μmg/m2、最高885μmg/m2で北京以上であることが分った(大和氏)。これがドアが開くたびにもれるため禁煙席への出入りも自粛しなければならないし、使用人も出入りする時は防毒面が必要となるかもしれない。結論は居酒屋、喫茶店、レストランなどは、全面禁煙にするのが最大理想的な条例となる。

化学物質過敏症の方々も忘れてはならない。彼らの行動も極端に制限されており、大変な苦労をしておられる。外国からの訪問者も軽い方は訪日されると思われる。たばこ害の足らないところをこの稿で取り上げたが、何れもたばこ害の最たるものであり、要因の受動喫煙対策は考えられなければならない。

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