禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

「サードハンドスモーク」を知っていますか?

広島市立安佐市民病院
名誉院長 岩森 茂

 これは平成21年1月アメリカの小児科医のグループが喫煙害を警告するために新しい言葉として発表し、たちまち世界中で有名になったものである。受動喫煙のことをセカンドハンドスモークといい、くゆらされた煙、すなわち環境たばこ煙は本人の吸う煙よりも毒性の強いことなどから健康増進法なる法律が制定されて公衆の集まる建物などでは禁煙遵守が当然の義務となってきた。
 ところがこの考えはなお生ぬるいことが最近医学的に取り上げられるようになり、それがサードハンドスモークであり、喫煙者が遮断された室内で喫煙したあとや喫煙者の頭髪や衣類、皮膚、居間のしみやほこりへの煙の染み込み、煙の消失した後や、さらには喫煙授乳母の乳の中などにはたばこ煙残留物質が付着あるいは含まれており、これらを「はいはい」するような幼児がふれたり、吸い込むことにより起る煙害のことである。
 この危険性に対しアメリカの小児科医は喫煙者の認識のあまりにも薄いことに強い警鐘を鳴らしているが、わが国の禁煙運動家も直ちにこれに反応し、日本語訳をあれやこれやと考えたようで、例えば残留受動喫煙、残留臭害、残留吐煙、強制吸煙、喫煙者媒介喫煙、喫煙残害、三次喫煙などがネットのメールの中で披露された。いずれも興味ある訳語であるが、今後国際的に通用するものをと考えれば、今のところサードハンドスモークとして理解しておく方が無難と思っている。
 ともあれ喫煙者に衣服や家具に付着した目に見えない化学物質には幼児に対し危険な毒物が多く含まれており、主なるものを拾っても青酸化合物、CO、ブタン、アンモニア、ヒ素、トルエン、鉛、クロミウム、カドミウム、さらにはポロニウム(放射性物質)などがあり、これらを乳児がしゃぶりその体内に蓄積していくとどんなことになるか身ぶるいする程恐ろしい。これを防ぐには家では絶対に吸わない、着衣は家に持ち込まない、家庭ではニコチンガムで我慢する、母親は絶対禁煙、車内でも喫煙禁止など受動喫煙以上に厳しい配慮が必要となってくる。外来で禁煙指導を行っている先生方も今後はサードハンドスモークにも考えを致して指導のシナリオを考えて欲しいのである。
 それにしても過去ホテルの客室やタクシーの車内でこのサードハンドスモークを嫌々ながら見過ごしてきたことは残念至極であり、この面からも今後のタクシー禁煙への攻めどころにして行きたいものと思っている。

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