禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

たばこ産業の干渉を阻止しよう

広島市立安佐市民病院
名誉院長 岩森 茂

 これはWHOの選んだ2012年度世界禁煙デーのテーマである。厚生労働省をはじめ、多くの関係自治体はWHOのあまりにも厳しいたばこ産業への挑戦なので、この言葉の引用に引っ込み思案の様相を呈している。特に、毎年行われる厚生労働省の5月31日に始まる禁煙週間のテーマは「命を守る政策」である。なぜたばこ産業の干渉を阻止しようという文言を表出ししなかったのか?確かに一般的に見れば、激しい表現であるが故に担当の厚生労働省幹部は尻込みしたのであろうか?
 さらに興味深いのは、WHOは Stop Tobacco industry interference の上段に大きな字で Intimidation(脅し)と警告しているが、厚生労働省はこれをまったく無視(?)しているように思われる。われわれ、地道に禁煙運動をしている者から見れば、たばこ産業、すなわちJTの干渉についてはいろいろと事実を掴んでいるが、その巧妙な手口のために疑いしか持っていなかった。
 大衆誌へのPRはほとんど姿を消したものの、民放やNHKのノンフィクション物語の中にもこれみよがしに喫煙をPRしたような場面にはしばしば遭遇してきた。彼らのPRも時代とともに変遷して来ているが、印象に残るのは「今日も元気だ、たばこがうまい」。これは「たばこ買うまい」とひねくられて中止している。まだあるが省略することにする。最近の巧妙なPRは分煙、すなわち「たばこを吸う人も吸わない人も共存する社会を」である。JTはいまだにたばこ害については他の原因を表に出して、発がんなど認めないような発言を繰り返しており、与党である民主党が掲げたマニフェスト、すなわち「たばこ事業法廃止」は絵に描いた餅のような存在になっている。特に、小宮山厚労相は就任時、たばこ税の値上げを第一目標に掲げたが、これも与党の他議員の圧力で、いつの間にか消されてしまった。
 さて、世界禁煙デーおよびその後の禁煙週間の記念行事として、厚生労働省が毎年WHOのテーマに従い、記念シンポジウムを企画しているが、本年度のテーマは「命を守る政策を」とJTの干渉を気にしてか、なんとなくぼけたテーマに変わってしまった。これはJTの横やりがまったくないと誰が言えよう。ただし、厚生労働省のホームページの中でシンポ開催広告を載せており、今年の世界禁煙デーの標語を正しく紹介し、WHOの作成した日本向けポスターにはたばこ規制を弱体化させるJTの戦略を見極め、立ち向かおうとの文言が英文で併記されていたのである。JT株の大半はなお政府(財務省)が保有しているが、たばこ事業法で結ばれているJTもその一味であると疑っても致し方なく、WHOの大きく掲げた Intimidation(脅し)に留意せよとの隠し文句に、弱腰になった厚生労働省は共催団体として日本医師会(あとは日本を省略)、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、たばこと健康問題NGO協議会、がん研究振興財団、結核予防法など、国内有数の学識団体を加え、後援団体も内閣府、文部科学省、警察庁など14団体を配下に加えて、大きな煙幕を張り巡らしたのである。

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