禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

禁煙治療は誰がする?~ポストチャンピックス~

広島県医師会禁煙推進委員
(済生会広島病院内科)
讃岐 英子

 国としてニコチン依存症の治療を積極的に実施しなければいけないことは「FCTC」でも謳われており、10月29日に出された厚生労働省健康局長通知でも前回にも増して強調されている。治療方法は国の方針によって変遷し現在では保険適用であるばかりでなく、複数の代替え療法を用いることが可能となった。このことは、ともすれば疲弊しがちであった禁煙治療医師に活力を与えてくれるはずであった。しかし、現在残念ながら禁煙治療は停滞傾向にある。
 バレニクリンの登場時からして今考えればおかしかった。「自殺企図」「意識障害」など確かに聞きなれない問題が出ていた。しかし、依存症治療という難しい治療薬であるから幾分は乗り越えなければならないと考えていた。どんな薬でも世界中から副作用を収集すればこんなもんだろう、今後の医師の責任で上手に使えばいいものだと考えていた。どこかで「使用できなくなる」ことへの恐怖があった。また、ガムやパッチがOTCとなり、医師のみが処方できるこの薬剤を守りたいとの気持ちが働いた。久しぶりにやる気も出てきた。しかし、「何かおかしいな...」と感じるようになったのは使用して間もなくであった。今更ではあるが、(1) 期待したより効果がない (2) 予想以上に副作用の頻度が高い (3) 副作用の中には「え?!!」と思う危険性を感じるものがある。などである。厚生労働省通達後は車の運転をする患者には使用不可となり、そのうち週刊誌でも騒がれるようになった。
 禁煙推進委員会ではポストチャンピックスとしての対策、代替など工夫していることがあれば知恵を寄せ合おうという呼び掛けがあるが、なかなか難しいのが現状である。当院での使用量は1~2割まで減少し、パッチ中心の診療となっている。しかし、パッチにも欠点があり、パッチで失敗した人が、「運転はしません」と明らかに無理して受診するケースも少なくない。
 代替方法と言うにはお粗末であり、有効かどうかも結論が出ていないが、ポストチャンピックスとして実践しかけていることは、「チャンピックスを使用しない」ということだ。パッチを嫌う患者には原則チャンピックスも投与しない。「認知行動療法」が重要となってくるが、看護師、薬剤師、栄養士などにもていねいに接してもらい、いろいろな面から働き掛けている。パッチや、ガムの補助薬は、患者のペース、経済力に合わせて最低限OTCで購入してもらう。タバコにかかる費用より少ない計算ではある。禁煙後の離脱症状には、積極的に睡眠導入剤、便秘薬、消化管運動促進薬、頭痛薬などを投与する。イライラに対しては安定剤だって投与する。そして、現在試みているのが、漢方治療である(専門医とは名ばかりの錆び付いた腕を急いで磨いている)。抑肝散、抑肝散陳皮半夏、気脾湯、香蘇散など試してみたい薬がどんどん頭に浮かぶ。結果はまだ公表できる段階ではないが、考えてみるとバレニクリンも元はオランダの雑草で、民間療法として使用されていたと聞いている。禁煙できる漢方はないが、禁煙過程で出るさまざまな症状に対して補助的に用いるのである。
 次に対策として実行しているのが、薬局の薬剤師さんにもっと気軽にパッチを用いた指導をしていただくようお願いしていることだ。忙しくて受診できない患者が多いため、これは私の以前からの希望であった。最近特に薬剤師の方へ禁煙関係の講演をする機会が増えてきたので、その場で「もっとやってください」「こうやってください」「こうすればいいんです」「失敗を恐れないでください」とかなり熱くなっている。
 東京武蔵野病院精神科の臼井洋介先生は禁煙治療について次のように述べられている。「一体禁煙指導・治療は医師がやるものなのだろうか。依存症の精神・心理療法は、治療者と患者との信頼関係がきわめて重要。適切な信頼関係を構築できない時は患者が信頼できるものを逆に質問したり、他の治療者・別の方法を提案することも必要。治療者は必ずしも病院・診療所の医師とは限らない。地域保健センターの保健師、福祉事務所の職員、会社の産業医・総務部であってよい。ただ、医療従事者はすべての喫煙患者に禁煙を勧告するべきである。お互いにいやな気分を抱いたとしてもそうすべきである。患者の記憶に残り、いつか禁煙に踏みきってくれる可能性がある」と。
 以上、チャンピックスが事実上使用できなくなった現在、認知行動療法をもう一度勉強しながら考えたことである。

戻る