禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

たばこ事業法を廃止しよう

広島市立安佐市民病院
名誉院長 岩森 茂

 禁煙運動家にとってはみるのもきくのも嫌!!というような感じのする法律である。
 天下の悪法であるたばこ事業法は1984年に制定されたものであり、その目的として「製造たばこに係る租税が財政収入において占める地位等にかんがみ、製造たばこの原料用としての国内産の葉たばこの生産及び買入れ並びに製造たばこの製造及び販売の事業等に関し所要の調整を行うことにより、我が国たばこ産業の健全な発展を図り、もって財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資する」と書かれている。
 これは、専売事業の民営化という方針に沿って制定された法律であるため、租税目的が強調されているのである。しかし、1984年といえば昭和59年であり、すでに広島県医師会禁煙推進委員会も結成されており、たばこ害が世に喧伝され始めた時代であることを考えると、当時の政府の中にこの事業法の正当性をまともに考えた政治家はいなかったのであろうか?
 有害商品を生産し、国民に売りつけることが健全な発展という言葉を法制化したのであるが、専売時代とまったく変わらないこの税収のみに目を向けた考え方は、その後批判されることもなく、現在に続いている。
 代々変わってきたJT社長もみな財務省出身であったが、この度初めてJT生え抜きの人物が社長となった。しかし、いずれの社長も就任時の挨拶、インタビューの中で、たばこ事業法について言及をした人はいない。
 すなわち、専売時代の志向と体制が引き継がれているとみえ、財務省とJTの結びつきについても話をする人はいない。
 その上にJTはいまだに独自の喫煙科学財団(名称は違う)を設立していて、喫煙を正当化する研究を続けているのである。特に彼らの言い分は喫煙と関係があるといわれるがんなどの諸障害~症状は住環境、食生活、ストレス、運動などの諸因子が相加わって関与しているために、喫煙がその関連する主なリスクとするのは問題があるとうそぶいてはばからない。しかし、たばこ販売を国で経営しているタイ、中国、台湾などはたばこ販売を行っても、一方ではたばこ害についても国民を啓発し、厳しい規制をとり続けているのである。
 それにつけてもおかしかったのは昨年民主党により行われた事業仕分けによる財政問題であるが、名をはせた蓮舫女史などもたばこ事業法については一言もふれなかったし、さらに財務省が一部は売ったものの、大半はかたく握り締めているJT株のとりあげはまったくしていない。
 それに加えて平成20年度だったと記憶するが、皆さまは民主党税制改革大綱の文言はご存知だろうか?「国民の健康確保を目的とする税に改めるべきである。そのためには現行のたばこ事業法を廃止し、健康増進目的のたばこ規制法を新たに創設し、FCTC(たばこ規制枠組み条約)批准国として喫煙率を下げるための価格政策の一環として税を位置づける」とする民主党案はその後どうなったのであろうか?
 小宮山厚生労働大臣も就任第一声でたばこ税値上げをぶち上げたが、これは偉大な発言だと思った矢先、いつの間にか立ち消えになってしまった。
 諸外国に比較してもFCTCの批准によっても、たばこ事業法なる悪法もなければ、たばこが健康被害はないとするJTのようなたばこ会社は世界で唯一日本だけである。
 日本の長い歴史の中でこの悪法は早く廃止しなければ、恥のかきっぱなしとなっていることを財務省官僚は気が付かないのであろうか?
 それ以上にJTに飼いならされているたばこロビーストの多い代議士の力の前に、何もすることができないのだろうか?
 アメリカの州法の中ではPL法(製造物責任法)を掲げて、たばこ会社を次々と敗訴に持っていっているところもあるが、さて日本は?
 ここでどうしても強調しておきたいことは、新しいたばこ事業法を厚生労働省の管轄の元に作るのが最も理想的な改革法と思うのであるが、字数が多いので省略する。

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