禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

禁煙治療のための標準手順書(第5版2012年)について ~禁煙指導の現場から~

徳永呼吸睡眠クリニック
内科・呼吸器科 徳永 豊

 2006年から外来診療での禁煙治療に対して健康保険が適用された。禁煙治療の保険適応の要件は、(1) 医師がニコチン依存症の管理の必要性を認めていること (2) ブリンクマン指数が200以上で、直ちに禁煙しようと考えている患者を対象とすることである。禁煙治療を行うには、厚生局に「ニコチン依存症管理料の施設基準に係る届出」が必要であり、「ニコチン依存症管理」を請求したすべての患者について治療結果を毎年報告しなければならない。さらに禁煙治療は、禁煙治療のための標準手順書に従う必要がある。禁煙治療のための標準手順書(第1版)は、2006年のニコチンパッチの保険適応認可に伴い、日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会の三学会合同で作られた。2008年の第3版では、禁煙補助薬チャンピックス(一般名バレニクリン)の認可がもりこまれた。2010年の第4版では、中・低用量ニコチンパッチの一般用医薬品への認可、チャンピックスの長期処方が加えられた。またこれ以降日本呼吸器学会が加わり四学会合同となった。さらに、2012年4月の第5版では、チャンピックスの意識障害に係る重大な添付文書の改訂がもりこまれた。標準手順書は、国および医療関係者の尽力により、必要に応じて、改定されてきている。
 保険適応となる禁煙補助薬は、内服薬のチャンピックスと貼付剤のニコチンパッチの2種類である。禁煙治療の現場で禁煙補助薬を選択する場合、判断基準は、薬剤の使用上の注意および副作用の観点から、行うのがよいと考える。
 チャンピックスの不適応ケースは、まず、精神疾患、とくにうつ病である。脳内α4β2ニコチン受容体の結合阻害薬であるチャンピックスの副作用には、抑うつ、不安、行動又は思考の変化、精神障害、気分変動、自殺などがある。そのため精神疾患においては、精神症状を悪化させるとのことで、標準手順書でもニコチンパッチが推奨されている。次のチャンピックスの不適応ケースは、運転する人すべてである。チャンピックスについて標準手順書および薬剤添付文書のいずれも、「めまい、傾眠、意識障害等があらわれ、自動車事故に至った例も報告されているので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させない」と記載されている。ファイザー社によるチャンピックス錠についての重要なお願い(2011年10月)を読むと「初診時だけでなく、再来院時にも、継続して自動車の運転等はしないよう患者様への指導を行ってください」と赤字で記載している。禁煙指導をする医師および服薬指導をする薬剤師は、毎回この確認をする必要がある。職業運転手および通勤に自家用車を利用せざるをえない人には、ニコチンパッチを選択すべきである。
 禁煙補助薬のもう一つの選択薬剤は、ニコチン経皮吸収剤であるニコチンパッチである。ニコチネルTTS30(ニコチン含有量52.5mg)、TTS20(同35mg)、TTS10(同17.5mg)の3種類(高、中、低用量)がある。日本では、臨床治験の関係か、24時間貼付剤として認可されている。ニコチンパッチの禁忌は、妊婦、授乳婦、不安定狭心症、急性期心筋梗塞(発症後3ヶ月以内)などがある。使用上の注意には、「本剤は24時間貼付するために、就寝中に不眠等の睡眠障害があらわれることがあるので、このような場合には本剤を中止すること」と記載されている。標準手順書では、不眠の場合は、就寝時にはがすように指導している。2008年5月から中・低用量のニコチンパッチが一般用医薬品として認可された。これらは、就寝前にパッチをはがす16時間貼付剤として認可されている。ニコチンパッチの標準的な使用方法では、ニコチネルTTS30を1日1枚ずつ4週間使用し、その後、ニコチネルTTS20とTTS10を各2週間ずつ使用する。とくに高用量を4週間使用する場合には、睡眠障害をおこしていないか留意する必要があり、寝酒や睡眠薬をとってないか確認することが重要である。ニコチンパッチは国際的には、16時間使用で用いられており、標準手順書および添付文書の改正がのぞまれる。
 現行のニコチン依存症管理には12週間という期間が限定され、禁煙治療薬の選択にも、制約がある。本来、禁煙治療には、いきなりニコチン依存症の治療に入るのではなく、基本的な生活習慣の指導という準備期間が必要なものである。生活習慣上の問題点を整理して、ニコチン依存症管理に入るというコンセプトが今後認知されることを期待したい。

戻る