禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

スイスの喫煙事情

広島県医師会禁煙推進委員会
津谷 隆史

 5月15日、中央アジアの旧ソ連の共和国、ウズベキスタンがWHOたばこ規制枠組条約(FCTC)に批准した。175ヵ国目となるが、WHOのWebを見ていると、なんとWHOのお膝元、スイスが未だに批准していないことを知った。FCTCとはWHOの下で策定された、保健分野における初めての多数国間の国際条約である。主な内容はタバコによる健康に及ぼす悪影響からの保護、未成年者対策、受動喫煙防止対策、健康警告表示・広告規制、社会経済的な観点からの対策、価格および課税対策などの取り決めである。2003年5月にWHOで採択され、2005年2月から発効されている。日本は2004年6月に批准している。
 ちょうど時期を同じくして、5月初旬、スイス、ジュネーブを訪問する機会があった。国際連合の独立監査官I氏から、スイス人マルセル・ジュノー博士の生き方をテーマにした"アニメ・ジュノー"のスイス上映依頼をいただいたためである。
 ジュネーブは、レマン湖を手前にし、遠くかなたにモンブランを仰ぐ、美しい自然に囲まれた国際都市である。しかし町を歩くと、必ずだれかのタバコ煙に辟易してしまう。日本よりはるかに歩きタバコが目立ち、路上には吸い殻のポイ捨てが氾濫している。
 スイスは、ジュネーブのある南はフランス語圏、チューリッヒのある北部はドイツ語圏、東はイタリア語圏で、それぞれ法律も人々の性格も考え方も州により異なっているらしい。そのためFCTCの批准に必要な法整備にはまだ時間がかかるようだ。また、タバコの価格は1箱500円とヨーロッパの中では安く、税率が60%で近隣諸国の75%~80%に比べると低い方だ。それゆえ、ヨーロッパの中ではスイスは禁煙後進国との汚名を着せられている。
 しかし、タバコパッケージには、2006年より警告文として「喫煙は健康に被害を与えます」と3ヵ国語で記載され、2010年5月1日から受動喫煙から国民を守る連邦法が発効され、公共施設内、飲食店内での喫煙が禁止になっている。国民の喫煙率も、23%強で日本と比較するとはるかに少ない。(図)

図 男女別禁煙率の国際比較
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(注)15歳以上の毎日喫煙者の比較。男性喫煙率の低い順。2004~10年の最新年。
(資料) OECD Health Date 2011


 FCTCにすでに批准している日本が、今後進めていかなければならないことは、受動喫煙から国民を守るため、公共施設内、飲食店内での喫煙を完全に禁止することである。神奈川県に続き、広島県、広島市へ受動喫煙防止条例の整備に向けて、これから広島県医師会のリーダーシップが問われるであろう。
 ちなみに、スイスがタバコに対して甘いのは「日本たばこ(JT)、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)やフィリップモリス・インターナショナルなど多くの外国たばこ産業の欧州本部がスイスにあるからだ」との声もある。特に日本たばこインターナショナルはジュネーブに本部を構えている。今年の世界禁煙デーのWHOテーマは、まさしくお膝元のメーカーに対しての警告であろう。(写真)

世界禁煙デー WHOポスター
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WHO本部(当日は日曜日で職員はほとんどいなかった)


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WHO玄関入り口

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