禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

たばこ増税反対の旗頭-東京都副知事 猪瀬直樹氏...

広島市立安佐市民病院
名誉院長 岩森 茂

 猪瀬氏はH22年のたばこ税値上げ時、安易な全面禁煙反対とともにたばこ増税反対論をぶちあげた有名人だ。今回小宮山厚労相が就任早々たばこ増税を宣言したが、これは空振り、その影にはJTロビイスト...国会議員の存在がある。猪瀬氏はこの一人ではないかと疑われている。彼の持論についてはわれわれ禁煙推進派も熟知しておく必要があろう。その第一の主張は税収減にある。過去10年間に行われた3回のたばこ増税による地方自治体の税収減が、予算計上の上でおおいにマイナス要因になっているという。これに反し、われわれ医師は喫煙家のたばこ病による医療費増が厚生労働省の予算を圧迫していることに言及するが、これは同じ土俵で議論することは難しい。喫煙者と非喫煙者にかかる医療費の差は歴然としているとは言え、喫煙による医療費、受動喫煙による疾病の発生、火災、労働時間の減少などで医療費やその他の損失が加わっても、即座に両者の損得論に判定を下すことは難しい。
 ともあれ、たばこ税収減が明らかである以上、財務省においてはネガティブな税収減を強調するであろうが、猪瀬氏のいうようなたばこ税収減はJTの昨年の報告では明らかに示されていない。さらに彼は諸外国の飲食店で完全禁煙が実施されれば、飲食店は屋外テラスを作ったり、喫煙室などの対策をしなければならないという。氏はたばこ締め出しの意義をまったく理解していないと思われるが、英国やニュージーランドにおけるレストラン、パブなどの全面禁煙後2年における現状で経営者側はまったく客減りがなかったことを報告している。氏は、厚生労働省が副流煙害を強く主張するが、黒煙を吹き散らして走るディーゼル車などの方に煙害が大きいという。これに排煙規制などで対策は講じられているといっても、この煙害についての科学的研究の中身はご存知ないようだ。また、食糧管理などの例をみても日本の規制は一度増やすと戻ることがないように、喫煙対策で禁止を増やし続けることは反対だ。喫煙者と非喫煙者の住み分けは可能だし、お互いにほどほどのところで折り合いをつければよいという。
 以上、簡単に氏の持論(産経新聞 H22年金曜討論より抜粋)を述べたが、要は氏が愛煙家であるがゆえのたばこ増税反対論とたばこ文化論を述べているにすぎず、受動喫煙防止法などの正しい理解はまったくないようだ。特に受動喫煙による妻子、妊婦への影響、未成年者喫煙問題、喫煙妊婦の胎児への影響など、たばこ害が実に深刻なものであるかは言及しておられない。特に自己の喫煙害はないものと決め込んでからの持論の展開であるため、税収を上げるために終始している喫煙行政担当者のうそぶきではなかろうかとおおらかに聞き流すことにする。

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