禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

職場環境と喫煙

広島県環境保健協会 健康クリニック
広島県医師会禁煙推進委員 勝部 睦子

 2011年12月2日、厚生労働省は第179回国会(臨時国会)に労働安全衛生法の一部を改正する法律案を提出し、閣議決定したと報じられました。
 以下の条項は新設されたもので、受動喫煙防止対策の充実・強化を目指したものです。
1 事業者は、労働者の受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。以下同じ。)を防止するため、屋内作業場その他の厚生労働省で定める作業場について、専ら喫煙のために利用されることを目的とする室(当該室からたばこの煙が漏れるおそれがないものとして厚生労働省令で定める基準に合致するものに限る。)を除き、喫煙を禁止することその他の厚生労働省令定める措置を講じなければならないものとすること。【第68条の2関係】
2 飲食物の提供その他の役務の提供の事業所であって厚生労働省令で定めるものを行う事業者については、当分の間、1は適用しないものとすること。この場合において当該事業者は、1の厚生労働省令で定める作業場について、労働者の受動喫煙の程度を低減させるための措置として厚生労働省令で定める措置を講じなければならないものとすること。【附則第7条関係】
 これまで、職場での受動喫煙防止対策は努力義務でしかありませんでしたが、この法案が可決成立すれば、労働安全衛生法改正により、受動喫煙被害が事業者の安全配慮義務違反に問われる可能性が生じます。
 私は、産業医を委託されている事業所では職場での喫煙対策を推し進める役割を求められていると同時に、労働衛生機関の医師として巡回健診のスタッフの立場で、多種多様の職場を巡回します。職場での喫煙事情はさまざまです。
 この数年喫煙対策の必要性は徐々に認識され、職場でもなんらかの対策が講じられ喫煙率は確実に低下してきていますが、現喫煙者に配慮してか、どこか及び腰です。
 職場環境と喫煙に関して日ごろ感じていることを何点か挙げてみます。
●職種により喫煙率が異なる
 一般に、業務時間の大半を事務所内で過ごす職種では、空間分煙が実施されている事業所では、たばこ離れが進み、喫煙率が低下する傾向がある。反対に、事務所を離れて外で仕事をする機会の多い職種(運転業務、建築関係、営業など)では喫煙対策が徹底されにくく、喫煙者の禁煙志向も低いため喫煙率が高い。某企業では平成22年度の男性喫煙率45.3%で、事務職35.5%、運転業務50.2%と差があった。吸いにくい環境を整えることは、禁煙の動機づくりに大きな役割を果たしていることを実感する。
●事業者(管理者)の喫煙に対する姿勢で喫煙対策は後退することもある
 管理者(特にトップかそれに近い人)が喫煙対策に積極的な場合は、非喫煙エリアでの禁煙は徹底され、従業員も決まりを遵守する。しかし喫煙に対して寛容な意識を有する管理者に交替し、応接室に灰皿が置かれたりして特例が見逃されたりするうち、従業員の気持ちも緩み、地道に進めてきた対策が何段階も元戻りすることもある。
 喫煙対策は社内規定などで明文化し、全員の共通認識事項として徹底する必要がある。

 職場での喫煙を規制する法的環境が整備されてもそれを実践するのは事業者と労働者です。
 双方ともに、喫煙対策は「労働者の健康障害防止」という観点から推し進めるべきであるということを常に念頭に入れて、互いに協力して推し進めていくことが最重要と考えます。

戻る