禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

医のプロフェッショナリズムと禁煙

広島西医療センター 研究検査科 立山 義朗

 昨年秋の日内会誌(2010;99(11):2876-83)の論文(タイトル:プロとしての行動 自身の行動変容:禁煙とプロフェッショナリズムの一考)を読み、医のプロフェッショナリズム(以下プロ)と禁煙との関係にたいへん興味を持ちました。医のプロを考える上で、2002年に米欧合同3学会がまとめあげた『新ミレニアムにおける医のプロフェッショナリズム:医師憲章』が参考になります。原文はまだ読んでいませんが、『白衣のポケットの中 医師のプロフェッショナリズムを考える(医学書院、2009年)』に3つの原則と10の責務が訳文で紹介されていますのでここに列挙しておきます。
 3つの原則とは、I)患者の福利優先、II)患者の自律性尊重、III)社会正義です。そして、10の責務とは、(1) プロとしての能力、(2) 患者に対して正直、(3) 患者情報の守秘、(4) 患者との適切な関係維持、(5) 医療の質の向上、(6) 医療へのアクセス向上、(7) 有限の医療資源の適正配置、(8) 科学的根拠に基づく医療、(9) 利害衝突に適切に対処し信頼維持、(10) プロの仲間や後進育成です。
 さて、最初に紹介した論文の骨子は、患者を診療、あるいは、若い医師を指導する立場にある医師は、まず自分自身を顧みて変えるべきところは変えて、医のプロとしての行動を実践しましょう!ということと理解しました。
 禁煙と関連づけてもう少し詳しく述べますと、第一に、「医師はみずからが喫煙してはならない」とあります。どうしてかと言うと、さまざまな病気のリスクを高めることが明らかな喫煙は、医のプロである医師の行動規範に反するからです。もっと言えば、喫煙は周囲の人にもタバコ関連疾患のリスクを高めることが明らかであり、喫煙は他人に危害を及ぼす行為に等しく、医のプロに謳われている『利他主義』の対極にある行為であるからです。
 第二に、「目の前の喫煙者(患者)を放置し、医師として何もしないことは許されない」とあります。医師は、喫煙する患者に対して、ニコチン依存症という病気であるがために慢性的に有毒な化学物質を反復摂取し、がんや心疾患や脳血管障害といった直接生死にかかわる疾患に罹るリスクが高まることを科学的に説き、患者に合わせた一次予防、二次予防、三次予防対策を施すことが医の本分であるからです。
 第三に、「ニコチン依存症から脱却しやすい、あるいはニコチン依存症にならない社会環境に変えていくために、医のプロの立場から積極的に提言や働きかけをしていくことも重要です」とあります。このたび広島県医師会が県に対して受動喫煙防止条例の制定を要望したことは、医のプロ集団による社会正義に沿った行動として高く評価されるものと思います。
 以上のように、社会的に一段高い位置にいる医師は、客観的にみずからの行動をことあるごとに振り返り、変えるべきところは変える!ということが、医のプロとして最も大切であると考えます。禁煙は医のプロとしてまず取り組むべき格好のテーマではないでしょうか。

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