禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

第1次予防は大切!

JA廣島総合病院 呼吸器外科
渡 正伸

 私は30代前半で禁煙しました。毎年春先に患うスギ花粉症が禁煙に踏み切るきっかけでした。アレルギー性鼻炎の状態で喫煙すると喘息発作と同様の咳嗽が出現し、呼吸困難に二度ほど陥った記憶があります。その上、3月は送別の時期で飲酒の機会が多く、体調不良となる上、転勤で引っ越しが重なると家財に積もったほこり、花粉を吸い込むこととなり最悪な状況を何度か体験しました。そんな死ぬ思いを味わったあげく、禁煙に踏み切ったのが実情でした。喫煙者はおそらく、このようなしんどい思いをしない限り、そう簡単には禁煙に踏み切れないものだと思います。私が手術した患者さんの中にも術後しばらくすると再び、タバコの臭いをさせてくる方も時々いらっしゃいます。死ぬような思いをしても喉元過ぎればまた...、という感じです。ですから、"健康に悪いので禁煙しましょう"と、どんなに言っても、そう簡単にはできないのが禁煙の現実です。そこで、まだタバコに手を出していない段階でタバコの有害性を理解してもらい、タバコに手を出さないようにしましょうと、次世代を担う子どもたちに喫煙防止教育を行ったら良いのではないかと考えました。私は臨床業務の合間を利用して、2001年より廿日市地域の小学校を回って喫煙防止授業を行ってきました。今年で10年経ちますが、今ではほぼ全域の小学校から呼んでいただき毎年授業を行っています。これは当初、個人活動として開始しましたが、2008年から佐伯地区医師会の活動として認めてもらい継続しています。生活習慣病の予防はより若い時代から必要だと思うのです。しかしながら時に無力感も味わいます。気胸で当科に入院してくる若者の中に毎年授業に行っているはずの小学校の卒業生がいるからです。Current smoker です。小学校時代にタバコの授業を受けたのを覚えていないかと聞くと、"覚えていません"の一言、"禁煙せんとまた気胸になるよ"と言うのが精一杯です。今まで私が行ってきたことは彼らにはまったく影響をおよぼしていなかったという事実を前に、喫煙防止授業の意義に懐疑的になることもしばしばです。
 肺癌の外科治療が私の専門ですが、真の目的は肺癌で死亡する人を減少させることであると考えています。紹介された肺癌患者を手術して治す医療は、予防医学的には第3次予防です。第2次予防は検診などによる早期発見、第1次予防は肺癌においてはやはり喫煙しないということでしょう。だから私は手術のほか、胸部CT検診を行い、そして喫煙防止授業を行ってきました。つまり、第3次予防だけでなく、2次、1次と包括的な予防医学を実施してきました。タバコが影響する疾患、いわゆるタバコ関連病は数多くあります。またニコチンが血流を阻害することを考えればすべての疾患において悪玉であることは明白です。タバコ関連病を担当しているすべての医師、医療関係者がもっと第1次予防に目を向けて、禁煙の重要性を今一度考えていただけたら幸いです。
 最近のアメリカの肺癌死亡者数は減少に転じています。この要因としてはアメリカでは癌の第1次予防を重要視してきた結果と思われます。アメリカの後追いは日本の得意とするところ、ぜひ肺癌の予防においても追随してほしいものです。

図 男性人口10万人あたりの肺がん死亡率―日米比較―

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