禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

喫煙シーンのなかった「ゲゲゲの女房」

広島市立安佐市民病院
名誉院長 岩森 茂

 「ゲゲゲの女房」とは、妖怪漫画「ゲゲゲの鬼太郎」を描いた漫画家 水木しげる氏の妻、武良布枝さん自叙伝が、平成22年春より約半年続いたNHKの朝の連ドラの題名である。内容は結婚した水木しげる夫妻が東京に出て調布市に住み、苦労のどん底にあえぎながら、清貧に甘んじて暮らした日々を描いたものである。
 貧乏神と同居していたあたりが漫画的で、あまり貧しさを感じなかったが、このドラマが終始すがすがしく描かれていたのは、毎回 Smoke Free(たばこのけむりがない)のシーンが続いたことである。私の生きた終戦後の時代にあまりにも似た「向う三軒両隣」とまではいかないが、下町の貸本屋、紙芝居などの風景描写は後期高齢者の私にとっては、実に懐かしいものであった。ドラマの途中あたりから、私は出版社が登場するのに喫煙シーンがないのに気づいていたが、やはり禁煙に熱心な仲間もこの点は早くから気付いていたようである。
 さて、配役について紹介すると、主人公の水木しげるは村井茂の役名で向井理が、夫人の方は村井布美枝の名で松下奈緒が共演している。両人とも役どころに忠実で、実に好感が持てた。そして、たばこを小道具として登場させなかったこのNHKの連続ドラマには、おおいに敬意を表するものである。NHKにはこのような喫煙シーンのないドラマを相次いで制作してもらいたいと思っているが(テレビより吐煙をなくす会というものがある)、引き続いて放送されている平成22年度後期の朝の連続ドラマ「てっぱん」も、現在のところ喫煙シーンはないし、その中に登場する「お好み焼き屋」も新規開店にあたって「禁酒・禁煙」を掲げることになっている。これは、厚生労働省が推めている受動喫煙防止目的におおいにかなっている。また、原文にもどるが、村井家は努力の甲斐あって貧乏神を追い出すこともでき、自宅を改造し村井プロダクションの看板を掲げ、弟子も複数かかえることになった。
 主人公しげるは戦争で左上肢を失っており、妖怪漫画を描く以外に趣味・道楽とてなく、仕事場で働く弟子たちにはタバコ臭さはなく実にすがすがしかった。妖怪たちもテレビ画面に乱れとぶことなく、夫妻の間に生まれた女の子二人も質素ながら健康で清純な青春像を演じていた。
 繰り返すが、私はこのドラマを担当したNHKのプロデューサ一、脚本家(山本むつみ氏)におおいなる拍手を送りたい。余談であるが、このドラマは映画化され、現在各地で放映中と聞いているが、私はまだ観ていない。むしろ昔から学会などで時折訪れたことのある境港周辺は水木氏の故郷でもあり、町には水木しげるロードができて、140体にも及ぶ妖怪のブロンズ像が設置されており、今や山陰の有数の観光名所となっているとのことであるが、暇があれば観光に行きたいと願っている。

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