禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

「妻は味方か?」

広島県医師会禁煙推進委員
済生会広島病院 讃岐 英子

 保険適用による禁煙治療が始まって足掛け5年になろうとしている。日常診療の合間に月2回禁煙外来を実施してきた。禁煙推進委員会の諸先生方の精神的なご支援のおかげで、また、禁煙学会の指導医の資格も取得して、最初は自信に溢れて指導してきた。ところが最近になって当たり前というべきか、どうも2割程度歯が立たない症例に出くわしている。一つだけその要因を挙げれば、周辺の先生方からの要望が強くなり、精神科的な基礎疾患があるとか、一癖も二癖もあるつわもの患者の紹介が増えてきたことだ。私が患者とけんかせずに何とかこなしていることが知られてきたせいだろうか。「じゃー‥、こんな症例をがんばってごらん」と叱咤激励してくださっていると思っている。何が何でもがんばらなければと思いながら...、やっぱり難しい。でも、私が困難と考える症例はほとんどの先生方が同感のようである。
 昨年の禁煙推進委員会主催の「禁煙外来研修会」はまさにこれら治療困難例3例のロールプレーであった。その中で今回取り上げたいのは、夫婦で来院するケースである。妻に引っ張られるようにして来院した夫。ブツクサ文句ばっかり言っている。しかし、イヤイヤでも来院したということは潜在的に禁煙願望があり、背中を押してほしいのである。相手の自尊心を尊重し、あせらなければ成功するはずだ。なにせ私が常々言ってきているように、「妻」が味方なのだから。ロールプレーも妻の協力で見事に成功している。しかし私の症例では、この妻は治療半ばでこう言った。「先生、もういいわ、かわいそうだわ、見とられんわ。こんなにしてまで止めさせるのはかわいそうだわ、止めるの止めさせるわ!!」
 もう1症例ご紹介したい。なぜか夫婦で来院した。夫は禁煙希望でやる気満々のヘビースモーカー、妻はしぶしぶ付いて来た?夫はしきりに、止められる薬、薬と連発し、今度こそと力が入る。しかし、来院のたびにCOアナライザーは10~15程度の陽性。「吸ってますか?」「何だって、吸ってるわけないだろう!」次の外来で、「吸ってる反応なんですよ。しんどかったんですね。何本吸いましたか? 対策を一緒に考えましょう」「吸ってないと言ってるでしょう」「でも判定は機械でするんですよ」「じゃー、先生は僕よりその機械を信じるってことですね。これは問題だな」「主人は絶対に吸っていません。妻の私が言っているのにそんなこと言われたら心外です」こんなやり取りが3ヵ月間続いた。途中でアナライザーのチェック、念のための交換は無論のこと、文献検索までした。当然治療中止を申し渡すべきであったが、トラブリそうで(詳細は書けないが)中止することができなかったのだ。3ヵ月後に言った。「COは陽性でしたが、ひとまず今日で終わりです」卒煙証書は渡さなかった。
 最近やっと「禁煙治療成功率」を気にしなくなった。本を読んでも、講習を受けても現実とのギャップは大きい。症例をこなし自分自身で答えを見出さなければ「タバコ」と戦うことはできない。今年も頑張るぞ!!

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